長年、歯周病を患っています。歯周病で土台の骨がやせ細ってしまってどの歯もグラグラになっていて硬いものはまったく噛むことができませんでした。食べることが辛い毎日でした。掛かりつけの歯医者さんからは、「総入れ歯しか手はありません」と言われました。しかし、歯をすべて抜かなくてはならないと思うと、寂しくなってしまって、「他に方法はないのか?」と、メデント歯科を訪れました。

伊藤先生に相談したところ「歯周病で土台の骨がやせ細ってしまっていても、インプラントは可能です」との回答をいただきました。説明の中で「歯の土台となる骨を再生することができる」ということも聞かせてもらいました。残せる自分の歯はなるべく残して、寿命が尽きた歯から抜いてインプラントにしていくことになりました。インプラント手術の際に、土台の骨を再生する手術を併せて行っていくというインプラント治療になりました。

手術は麻酔を使った無痛治療のため、寝ている間に終わってしまいました。土台の骨ができるまで六カ月かかるとのことでした。その間は入れ歯を入れて憂鬱な日々を過ごしていました。土台の骨が安定しインプラントの歯が入ったとき、最初は違和感がありました。しばらく日がたつと、いつの間にか自分の歯でかんでいたときのように噛みしめることができるようになりました。今ではスルメイカなどの方い食べ物も噛み切れるようになりました。食べることが楽しくなりました。

◆歯槽堤拡大術=サイトダイレーティング(図5)

歯が抜けると歯槽骨が萎縮して薄っぺらくなってしまいます。4㎜くらいの薄さまで薄くなってしまうと、そもそもインプラントの直径が4㎜前後あるので、インプラントが顎の骨に収まりきらなくなってしまいます。そんなときに用いるのが歯槽堤拡大術です。
まず直径2.0から2.5㎜程度の細いドリルで竪穴を掘ります。その穴に、先端が丸い円柱形のダイレーターと呼ばれる棒を押し込んでいきます。棒は直径が細いものから太いものまであって、それを細いものから順に押し込んでいくことによって、顎の歯槽骨がゆっくり拡大していくというわけです。この棒の代わりに、ネジ状の器具をやはり細いものから順に太いものに代えて、拡大していく場合もあります。最後に穴が、インプラントを植立するのに十分な直径になったらインプラントを植え込みます。
これをサイトダイレーティングといい、顎の骨が薄い人に対する対処法としては初歩的なものです。

歯槽堤拡大術

◆歯槽堤分割術=スプリットクレスト(図6)

顎の骨が幅、3㎜くらいまで薄くなってしまうと、歯槽堤拡大術では対応できません。そんなときに用いる方法が歯槽堤分割術です。主に上顎の前歯の部分に用いられるケースが多いですね。
上顎の前歯は顎の骨の真ん中に立っているわけでなく極端に前方に位置します。したがって上顎の前歯が抜かれるとその唇側にある骨は紙のように薄いので、あっという間に溶けてしまいます。そうなると残る骨は本来あった歯の内側を支えていた骨でアルプス山脈のように切り立っているのです。とくに女性では身体のつくりが華奢にできているので顎の骨も薄いのです。ですから、少しでも骨の萎縮が起きると、インプラントの植立はきわめて困難です。
歯槽堤分割術はこうしたケースでも、インプラントの植立を可能にする方法なのです。
顎の骨の中でも、かつて自分の歯が植わっていて、今、新たにインプラントを植立しようとする部分を歯槽骨といいますが、歯槽骨が非常に薄く、剣の刃のようにとがった状態の場合、一般歯科医ではそこで手術を中止せざるをえません。なぜならインプラントが固定できないからです。
歯槽堤分割術ではこのような薄い骨を二枚に割って、その二枚の骨の間に、サンドイッチ上にはさみ込むようにしてインプラントを植立する方法で、きわめて高度でかつ精緻な技術を要求されます。メデントグループでもこの手術を行う場合は、ルーペで視野を三倍拡大にして行っています。
二枚に割るときは、ごく薄いノミから厚いノミまで五~六種類のノミを使い分けながら、骨折させないように細心の注意を払います。そして、植立したインプラントの周囲や二枚の骨の間に自家骨(ご自分の骨)かカルシウムの結晶を詰め込みます。六カ月程度でこれらの隙間は骨に代わり、インプラントもしっかり結合して、噛み合せの圧に耐えるようになりますから、上部構造(人工歯)の作製、固定に入ります。

歯槽堤分割術